2012-01-01から1年間の記事一覧
「あー、この数の子おいしい!」 「そうだろう。おいしいだろう?何せ私が作ったんだからな。」「お前はニシンか。」 「馬鹿を言うな。その位もわからないのか。私はネズミだぞ?」 「わーってるよ、そんなの。分かってて言ったんだよ。」「ほう、私も分かっ…
先程まで死闘を繰り広げていた少年は、地面に伏していた。怪我ではない。気絶、昏倒していたのだ。 「あんた、その人間に何をしたんだい?」 横の幼い鬼の少女が押し殺したような声で、黒着物の青年に尋ねた。「頭に霊力を流して、人間の部分を混乱させまし…
目の前に、背を向けて店に入ろうとする人影を正面に見据えた。「そこの鬼!そこで何をしている!」走り出してから十分もすると、俺はこんな事を声高に叫んでいた。その影は、返事の代わりに薄闇からその正体を現した。 それを見た途端、思わず顔が引きつって…
夢から覚めた翌日は、寺子屋が休みだった。そろそろ、服を新調するか。 墨も新しく買いに行かねばならない。 ・・・よし、一人で買い物に出掛けるか。 そう思い立ったら、後は早かった。 幻想郷に来て初めて自分だけの用事で、 一人で買い物に出掛けることに…
今日はいつもよりもだいぶ早く起きた。誰よりも早く起きて、朝食を作る。 もちろん、目的は妹に出会わないうちに学校に行くことだ。・・・作るといっても、即席の炒飯だ。 多めに作って、残りをお昼に回せばよい。猿でもできるし、俺でもできる。 ・・・いや…
俺には小さな特技がある。夢ということを、自分で気付けるようになったのだ。 つまり、自分で夢の中と割り切って行動できるのだ。 普通は起きた時にあれは夢だったと気付くものだが、俺は違う。ただ、夢の中の事は操作もできない。 最後に寝た世界が待ってい…
突然現代入りした夕方。 彼我さんから、経緯を聞いた。 すべて、彼女が作り出した夢だったのだ。原理は分かった。腕があったりとか、諸々の理由もはっきりした。 ただ、どうしても分からない事がちらほら。 「恩返しとは、何をどのようにそう思っているので…
この上なく暗い気持ちで暗い廊下に座り込んでいた。 ・・・どんなに考えても、やってしまったことしか悔やめない。 そんな自分が腹立たしくて、悲しくて、情けなくて・・・。 やっている途中に歯止めをかける事すら出来ないのだ。 嫌だ、本当に嫌だ。 自分に…
身体が重たい、何もかもが重たい。さすがにまとわりつく空気までそうは思わなかったけれど、荷物が重い。 中身を確認しても、教科書が十冊と辞書が二冊、お弁当、飴、ティッシュくらい。 また袋を閉めては、駅にある自転車のかごにどさりと載せた。あとは、…
・・・視界がゆっくりと白んできた。 うとうととした、心地よい眠気。 しかし、これから俺は目を覚ますのだろう。 寝ていたい・・・ 「東雲ッ!!」「はいぃっ!!」うっすら開いた目を、ぎゅっとつむると、今度は頭上から大きな声がした。 反射的に身体を震…
結局、あの後命蓮寺に戻って、 おいしい卵焼きをぱくつきながら響子さんの話を聞く。 橋を銜えながら聞いているとムラサさんに箸の先端を弾かれて注意された。こうやって注意してくれりゃ痛くなくて良いのに。 こういう時、ナズーリンとかはどうして喉の奥に…
もしも、穢というものが無かったら、どんなに良いだろうか。 生に苦しむことも無ければ、死の恐怖に怯えることもないのに。 幻想郷は、穢に満ち満ちている。
幻想郷に、また冬がやってきた。 俺が来たのも、ちょうど冬のはじめだった。 そう、幻想郷に来て、一年が経ったのだ。 長かったような、短かったような・・・。 ・・・そう、あの事件から、早三ヶ月が経つのだ。まだ、鬱々とした気分は残っているものの、だ…
もう、あの二人はいないんだ。片方は、救えたはずの命なのに、俺が奪ってしまったんだ。 ・・・俺が。 あれから、一週間が経った。 どうにも、寝ても覚めてもあの光景は忘れられないらしい。 水風船を割るかのような、あの感触は 今も生々しく手と頭にこびり…
夜も更けた妖怪の山。俺は立ちすくんでいた。 どうしようもないことを、どうにかしたかったのだ。 目の前で起こった凄惨なこと。 これを、どうにかしたかった。 ・・・彼を、教師として救いたかったのだ。 「・・・道。」 俺は、呆然と立ち尽くした少年に声…
・・・ふとした拍子に目が覚めた。 周りは真っ暗で、よく分からない。 頭の重みも幾分かよくなって、痛みもだいぶ引いていた。 熱っぽさも、倦怠感も、かなり和らいではいた。 どのくらい寝ていたのだろうか。体調の治り具合を鑑みるに、どうせ大した時間で…
柔らかくて、冷たい布が顔を優しく撫でる。 布が動くたびに、見え隠れする、優しげな顔。 「君という奴は・・・これで何度になるのだろうな。 いつもいつも、無茶をしてから誰かに迷惑をかける・・・。」「はい・・・ごめんなさい・・・。」 あれからしばら…
・・・。 「ねね、僕は里に行って芝居の公演が見たいな!」「だーかーらー、そういう人が多い所は嫌いなの!! もっとさあ、静かな所へ行かない・・・?頼むよ・・・。」 ぼーっと起きて、ぼーっと広間で朝ごはんを食べているとき、 目の前で見せ付けられる…
もうどのくらいが経ったのか分からないのに、命蓮寺は明かりが点る。 いったい、こんな遅くまで誰が起きてくれてるのだろうか。そんな事、想像がついている。うれしいのだが・・・それがたまらなく憂鬱なのだ。 小さくため息をついて、玄関の戸に手を掛けよ…
妖怪の山を降りた。 煌々とした月明かりが照らす田園風景を、一人でぶらぶらと歩いていた。 目的地は命蓮寺だが、寄り道はしていた。 丙さんは、無縁塚に行った。 道は、天狗の大目玉を食らっている。 メルシアさんは、道を待っている。 深水は、反応がない…
「射命丸さんっ!後ろ!!」 「わかってます!!指図しないで!!」あの化け物の素早い攻撃をかわしながら、息も絶え絶えに怒号を飛ばしあう。もう、四人とも限界に来ていたのだ。 どのくらい戦っていたのだろう。 椛さん以外は、おおよそ酷い戦力差はない。…
未だかつてない光景を目の当たりにすることになった。 おかしいと気付くべきだった。丙さんが一時的に戦闘離脱して俺の回復に回った。 治した直後に、すぐに戻ろうとした。 ・・・ゆっくり話してからだと、遅かったのだ。 「・・・なんだよ・・・あれ・・・…
いつも通りの月に目をやり、また視線を戻す。視線の先には、狼狽する狼少女。 眉根を吊り上げてて、月を睨んでいる。俺は座り込んでいた。 というか、まともに立てない。 「・・・月がどうしたんですか?何も無いじゃないですか。 椛さん、考えすぎですよ。…
「・・・ふう・・・それにしても、こんなにうまくいくとはな・・・ まあ、ボクも頑張った甲斐があったってものかなっ・・・。」 月夜の下、打ち解けあう少女二人を目の前に、 疲れたようにオッドアイの少年は座り込んだ。 少年は、月を見ながら深い深いため…
寒風が吹き荒ぶ季節、風も冷たくなってきた。幻想郷の秋はどんどん深まってきた。 ・・・よし、そろそろだ・・・ 「・・・リア。どうしてこんなにかぼちゃを買ったんだい?」 木枯らしが足の間を抜けるお昼ごろ。 市場から命蓮寺への帰り道。 眉根を寄せつつ…
目の前で、一人の少女がお腹を刺され、膝を突いた。 少女の口からは、鮮血が滴り落ちた。 黒髪の少女の手は、震えていた。 俺は聞こえぬのも忘れて叫び続けていた。 道はそんな俺をなだめすかそうとしていた。 椛さんは、ひたすら落ち着きなさそうに月と少女…
陰る満月の下。 二人の少女は、激しく刀と拳を交えていた。 一方は必死の形相で刀を激しく振り抜き、怒涛の如く攻めていた。もう一方は憂悶の表情でその刀を腕で無言で受け流す。 誰がどう見ても、丙さんが押している。 ・・・いや、もっというと、戦いにな…
陰った満月の下、焦土になった山の上。 道についていき、言われた場所で、俺と椛さんは腰を下ろした。 道いわく、彼女達には見えないようになっている・・・らしい。 あと、余計な抵抗をしたらコチョコチョした後ぶすり。とのこと。怖い。 腰を下ろしてから…
「・・・椛さん。」「どうしたんですか?」 彼女に肩を貸してもらって妖怪の山を移動することしばし。 喉の調子も少しずつ、回復してきた。昨日の敵は今日の友とはよく言ったものだ。 既に彼女には、感謝の念を感じている。 もしも、追い返すだけなら腕を切…
リア「・・・あの。このタイトルは何ですかね。」彼我「あまりにも・・・雑ですよね。相変わらずです。」あおみど「まあ、細かいことはいいじゃん。 こんな形で一度やってみたかったんだよ。」「・・・しゃしゃり出てくるなんて珍しいですね・・・」「何でお…