2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

東方幻想明日紀 三十話 平和な一世紀

「玉子丼ひとつお願いします!」 通る低めの声が厨房に響き渡る。いつもの光景だった。 何も変わらない時間が、紫詠さんのお店でゆったりと流れていた。 「…私たちも、お昼にしよっか」ぴのすけが何も変わらない笑顔で僕にそう持ちかけた。あの事件から百余…

東方幻想明日紀 二十九話 死人は語る

春にも似た柔らかい日差しの中で。 僕は大鍋をゆっくりとかきまぜていた。「…ぴのすけ、怪我しないでよ」 少女は緩い風に腰マントをたなびかせ、笑顔で頷く。 その手に握られた包丁が、トン、トンと小気味良い音を立てていた。広場に人が徐々に集まりだして…

東方幻想明日紀 二十八話 幼き妖幻、拙き証言

歩いている実感は無かった。 それどころか、立っている地面さえもないような気がして。ただ目の前が白かった。 ひたすら、だだっ広い白だった。帰路を僕とぴのすけと紫詠さんの三人で歩いていると、 引きずりこまれるようにこの世界にきていた。この場所の正…

東方幻想明日紀 二十七話 異変の元の元

先の見えない林道の暗闇の中で、手探りで彼女の手を捜す。 水の激しく流れる音が遠くでした。 …川の水が戻ったのだ。 沙代ちゃんの身体は、水で出来ていたのだ。 彼女が未練を晴らしたところ、あの雪もどきが全て水に戻った。村は、水不足から救われた。 明…