2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

東方幻想今日紀 三章  序話  僕のしあわせは

「メルシアくん・・・だよね・・・?」 「ああ、もちろんだ!」 メルシアくんは自信満々に、胸を叩いて頼もしそうに言う。 ・・・でも、私の視線は閉じたままの 月の淡い光に照る彼の左目にずっと注がれていた。 ・・・理由なんて、私には訊けなかった。 ぼ…

東方幻想今日紀 三章  序話  籠の中の龍

「おい、いい加減に寝たらどうだ。」 「・・・こんな状況じゃ寝れないよ・・・。」 ・・・私がここに運ばれてから三日。そう聞かされていた。 つまり私がここで目が覚めて、二日目になる。 私を敵視している国の人の発言だから、 間違っているかもしれないけ…

東方幻想今日紀 三章  序話  僕にとって初めての 

僕が丙子さんに怪我の手当てをしてもらって二日目。 小さなもやもやが一つだけ、僕の心の中にあった。 それは、怪我のことだ。 僕は両足と腰を骨折した。 僕の国では敵視されている、 龍の丙子さんの家で寝泊りしているのはそういった理由だ。治ったら、僕は…

東方幻想今日紀 三章  序話  あなたの国を私は知らない

ある日、私は中間域の森で倒れている男の子を見つけた。 少年は黒髪で、小さな矢筒を背負っていた。 でも、弓はどこにも見当たらなかった。 見たこともない服を着ている。その手には、この辺りでしか取れない 病気の特効薬になる真っ赤な木の実があった。 そ…

東方幻想今日紀 三章  序話  十三歳、僕の国で 

これは幻想郷の外の世界、とある二国の間に生まれた二人の話である。 ある所に二つの国が存在する世界があった。 そして、そこには二つの種族が暮らしていた。比較的弱い人間と、身体能力全般が高い龍。人間の数が圧倒的に多く、龍は少数だった。 片方の国は…

番外編 雨は止まず、天(あめ)は病ます 万

「・・・ここが・・・。」 「ああ、結構何でもない場所だろう?」 階段を上りきると、だだっ広い雲の上の様な世界だった。 一面の柔らかそうな白に支えられた、自分の足。 そして、視線のすぐそこには小さな白い扉があった。 ・・・なのだが、あまりにも小さ…

東方幻想今日紀 三章

異変を解決した翌日の昼下がり、丙さんが戻ってきた。 実に一ヶ月近く、姿を晦ませていたのだ。 そんな事実を、笑顔で取り繕った丙さん。 「みんな、心配掛けてごめんねっ! ちょっと友人の方で外せない宴会があってさ・・・」 恐らく、嘘だろう。 彼女の目…

中間報告です^^

こんにちはー!あおみどです。 幻想今日紀も無事百話を迎え、元気もりもりで書いてます。 いや、最近は「楽しく描いている」という感覚ですね! ・・・で、本題ですがジウさんとのコラボ小説、 予想以上に長くなってしまいました。(いや、書いてて楽しいん…

番外編 雨は止まず、天(あめ)は病ます 天

「さあ、目を開けてくれ。」 「ん・・・。」 ・・・そんな声と同時に、 うっすらと重い瞼を上げる。 「・・・!?」 少しずつ上がってゆく景色に、信じられないものを見た。 「ああ。びっくりしただろ?驚く勿れ、直通だ!」両手を広げて、少しだけ大げさに…

番外編  雨は止まず、天(あめ)は病ます  宙

「面白そうだな、少年!ちょっと混ざるぞ!」 突如、そんな言葉を引っ提げ命蓮寺の人の輪の渦中に降り立った、 俺より少し年上のラムネの小瓶を片手に据えたお兄さん。 全員が唖然となった一瞬。 この状況で渦中に混ざる狂気。 この状況で渦中に混ざる自信。…

番外編  雨は止まず、天(あめ)は病ます  空

「晩秋様っ、大丈夫ですよ!話せばわかります!」「・・・うん・・。」 命蓮寺への帰り道、俺とののはぬかるんだ砂利道、 のしかかるような灰色の雲を背負って二人で歩いていた。 雲間からは薄い太陽が見える。 ののの小さい、緑のランプの付いた黒い腕輪の…