2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧
「メルシアくん・・・だよね・・・?」 「ああ、もちろんだ!」 メルシアくんは自信満々に、胸を叩いて頼もしそうに言う。 ・・・でも、私の視線は閉じたままの 月の淡い光に照る彼の左目にずっと注がれていた。 ・・・理由なんて、私には訊けなかった。 ぼ…
「おい、いい加減に寝たらどうだ。」 「・・・こんな状況じゃ寝れないよ・・・。」 ・・・私がここに運ばれてから三日。そう聞かされていた。 つまり私がここで目が覚めて、二日目になる。 私を敵視している国の人の発言だから、 間違っているかもしれないけ…
僕が丙子さんに怪我の手当てをしてもらって二日目。 小さなもやもやが一つだけ、僕の心の中にあった。 それは、怪我のことだ。 僕は両足と腰を骨折した。 僕の国では敵視されている、 龍の丙子さんの家で寝泊りしているのはそういった理由だ。治ったら、僕は…
ある日、私は中間域の森で倒れている男の子を見つけた。 少年は黒髪で、小さな矢筒を背負っていた。 でも、弓はどこにも見当たらなかった。 見たこともない服を着ている。その手には、この辺りでしか取れない 病気の特効薬になる真っ赤な木の実があった。 そ…
これは幻想郷の外の世界、とある二国の間に生まれた二人の話である。 ある所に二つの国が存在する世界があった。 そして、そこには二つの種族が暮らしていた。比較的弱い人間と、身体能力全般が高い龍。人間の数が圧倒的に多く、龍は少数だった。 片方の国は…
「・・・ここが・・・。」 「ああ、結構何でもない場所だろう?」 階段を上りきると、だだっ広い雲の上の様な世界だった。 一面の柔らかそうな白に支えられた、自分の足。 そして、視線のすぐそこには小さな白い扉があった。 ・・・なのだが、あまりにも小さ…
異変を解決した翌日の昼下がり、丙さんが戻ってきた。 実に一ヶ月近く、姿を晦ませていたのだ。 そんな事実を、笑顔で取り繕った丙さん。 「みんな、心配掛けてごめんねっ! ちょっと友人の方で外せない宴会があってさ・・・」 恐らく、嘘だろう。 彼女の目…
こんにちはー!あおみどです。 幻想今日紀も無事百話を迎え、元気もりもりで書いてます。 いや、最近は「楽しく描いている」という感覚ですね! ・・・で、本題ですがジウさんとのコラボ小説、 予想以上に長くなってしまいました。(いや、書いてて楽しいん…
「さあ、目を開けてくれ。」 「ん・・・。」 ・・・そんな声と同時に、 うっすらと重い瞼を上げる。 「・・・!?」 少しずつ上がってゆく景色に、信じられないものを見た。 「ああ。びっくりしただろ?驚く勿れ、直通だ!」両手を広げて、少しだけ大げさに…
「面白そうだな、少年!ちょっと混ざるぞ!」 突如、そんな言葉を引っ提げ命蓮寺の人の輪の渦中に降り立った、 俺より少し年上のラムネの小瓶を片手に据えたお兄さん。 全員が唖然となった一瞬。 この状況で渦中に混ざる狂気。 この状況で渦中に混ざる自信。…
「晩秋様っ、大丈夫ですよ!話せばわかります!」「・・・うん・・。」 命蓮寺への帰り道、俺とののはぬかるんだ砂利道、 のしかかるような灰色の雲を背負って二人で歩いていた。 雲間からは薄い太陽が見える。 ののの小さい、緑のランプの付いた黒い腕輪の…