2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

東方幻想明日紀 三十九話 狼少年と黒い猫

のうのうと湯に浸かっている気分でもないので、 二人で湯船から上がって、着替えることにした。 男性用の脱衣所に、三人。「もうすぐ襲ってくるって、いつかはわかるのか」 「うーん、もうすぐかな」 彼女が何者か、本当にわからない。 服装が妙なのはそう驚…

東方幻想明日紀 三十八話 僕とおじさんと保護者

人間が苦手だ。 別に信念をもって嫌っている訳じゃない。 むしろ好きか嫌いかで言えば好きだ。「おっちゃん、これでいいよね」 「おう、あとそこの大根もな」 こうやって、人の下で働くことに喜びを覚える体である。 人間が嫌いなはずがなかった。価値観だっ…

ナズーリンにお返しのクッキーを渡すまで 下

先生の通る声が、そのまま僕の耳から明後日の方向へ通り抜ける。 僕はまた小さな事で悔やんでいた。教科書を一斉に開く音がワンテンポ遅れる。「…」 横で、誰にもわからないくらい小さく身を乗り出した。 その姿は一瞬だけ視線をやって、僕の表情をうかがっ…

ナズーリンにお返しのクッキーを渡すまで 上

彼女は今日もいつもの数人の友人と談笑していた。 表情は決して豊かじゃないけれど、口元はよく動いた。 饒舌ではなかったけれど、返しが早くてよく切れる人であった。近頃ぼんやりと、休み時間を何もせずにこうやって過ごしていた。 昼休みには、その数人の…