2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

番外編  雨は止まず、天(あめ)は病ます  上

この小説はジウ(yuutakatou)さんとのコラボです。ジウさんとの同一のお題で異なるものを書くので、 もしよろしければジウさんの方も見ていただけると幸いです。 幻想郷に、一足も二足も早い梅雨がやってきた。 あの刻印異変から二ヶ月が経った。 即ち小春…

東方幻想今日紀 百´話  後日談

「リア君、あなた宛に二つ手紙が着いてるよ?」 「ん、わかった・・。」 広間でムラサさんが手紙を懐から取り出した。 俺はそれを真顔で受け取る。 あれからたった十時間ほど。 妖夢さんは異変解決したと聞いて、確認のために去った。 ・・・差出人など、一…

東方幻想今日紀 百話  自殺なんてさせない

突如、藍色のキャンバスに黒い油絵の具をぶちまけて、 そのキャンバスを引き裂いて、もっと黒い、もっと暗い穴から 出てきた大きな傘を持った女性。 小春を差し出せ。 彼女の言った事を乱暴にまとめると、 そんな事を持ちかけてきたのだ。 ・・さっきまで、…

東方幻想今日紀 九十九話  自己と他己の境界

激しくぶつかり合う白刃と蒼刃。響き渡る小気味良い金属の音。 しかし、厳密には、金属と金属のぶつかり合う音とは若干違う。 ・・金属と、得体の知れない何かだ。 「・・・くそっ・・・なんでっ・・・!!」 ・・少年は、勝利を確信していた。 「・・・小春…

東方幻想今日紀 九十八話  ふ た り あ

「どうして・・・っ!!どうしてっ・・!!」 幾度と無く振られた青い刀は、 全て小春の持つ脇差に弾かれていく。 ナズーリンの素早いロッドも捌きもそれに加勢するが、 小春は全てかわしている。 ・・・どうして脇差ごと斬れない・・・!? どうして深水が…

東方幻想今日紀 九十七話  自己嫌悪

望が高くなり、真上に来た。 望月は明るく、眩く、そして冷たく山肌を照らしていた。妖怪の山の麓、南側は拓けた場所になっている。 ・・・それはこの日の前日からである。 「・・・時間はぴったりだな・・。」 「・・・ああ。間違いないはずだ。」 子夜に指…

東方幻想今日紀 九十六話  今日と明日の境目で

「・・やあ!今から一度しか言わないから良く聞いてね!」 いきなり幼い全身黒タイツの山高帽の男の子が ロケットのように部屋に突っ込んできた。 こんな事を話すと、普通は頭がおかしいと思われるだろう。 ・・そんな事が目の前で起こっていた。 ・・二人で…

東方幻想今日紀 九十五話  十四夜の夜

・・俺はあのウサギの子を取り逃がした。でも、結果的に竹林から出られたし、いいか。 ・・それに彼女の悪戯だっただけで、命も助かったわけだ。 ・・・つまりまた、命蓮寺に戻って来れた訳だ。 ・・しかも、刻印の時間稼ぎまで出来た。 やることもやって、…

東方幻想今日紀 九十四話  うさぎ狩り

竹の中を駆け抜ける風が優しく頬を撫でる。 冬の晴れた深夜は極寒になるはずだが、 まだ夜は酷く更けておらず、少し肌寒い程度で済んでいる。 俺は通る風に目を細めた。 夜の散歩、といった所だろうか。さわさわと竹の葉や幹が揺れ動く音がして、 月明かりが…

東方幻想今日紀 九十三話  刻印の正体

「俺の腕を・・・固めてください・・・。」 永遠亭という名の日本屋敷で診療所。 お互いが高い椅子に座り、小さな台が間に置かれている。女医さんは鈴仙さんに薬の調合をするように言い、 鈴仙さんは奥の部屋に消えていった。 和室には彼女と俺だけになった…

東方幻想今日紀 九十二話  不死鳥、半妖、永遠亭

「・・・ここを突っ切ると永遠亭だ。」 「・・はい。」 俺は妖怪の山を下りて、 迷いの竹林で案内してくれる人と一緒に同行していた。 案内してくれたのは、長い銀髪の頭に 大きな飾り気の無い紅白のリボン、 更に長い髪の至るところにもそれがあった。 彼女…

お知らせ 

全ての話にサブタイトルを付ける事にしました。 初めて見る人も見返してくれる人も見やすいので・・・。 後自分が見返すときもわかりやす・・・ごほっ

東方幻想今日紀 九十一話  材料集め二日目

・・・ここはどこだろう・・・。 見渡す限りの砂漠。 空は一面赤い絵の具をこぼしたような色に染まっている。 ところどころに骸骨が散らばっていて、とても不気味だ。 空には鳶のような大型の鳥が多数輪を描いて飛んでいた。 風が生暖かく頬を撫でる。空気が…

東方幻想今日紀 九十話  大切な話が台無し

「・・・では、今起こっている事を言います。 これから話すことは全て事実です。よく聴いて下さい。」 しんとした広間に命蓮寺の全員が集まった。そして、卓袱台の前で両手を後ろ手に縛られて、 更に重々しい錆色の腕輪をはめられている頬っ被りの少女が と…

東方幻想今日紀 八十九話  lose a chance

「はあ・・・拍子抜けだな・・・。」 「うん・・・まったくだよ・・。」 俺とナズーリンは妖怪の山の麓・・・の近くの林道、 命蓮寺の帰り道をとぼとぼと移動していた。 ・・・あの後俺達は雛さんに言われた妖怪の山の中腹、 南側の例の場所に行った。 そこ…