2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

東方幻想明日紀 二十六話 正義の山姥と水精

深闇の中で、ひとり。 同行者の一瞬の死に動揺している暇なんて無かった。ゆっくりと、その刀を持った長身の女の影は近寄ってくる。模様はおろか、視界を確保するための節穴一つ空いていない 異様な白無地の仮面に、底知れぬ不気味さも感じていた。僕の足は…

東方幻想明日紀 二十五話 暗い林の一つの絶影

松明を片手に、僕と壮年の男、セザは暗い林を突き進んでいた。 手元の亡とした明かりは、よりその不気味さを加速させる。 「行くあてはあるのですか。」僕は男の大きな背中に問いかける。 男は振り向くと、小さくうなずいた。僕はセザという男を信用したわけ…

東方幻想明日紀 二十四話 本当の敵

「…おはよう、起きて。」眠たい目を擦ると、ぼんやり見えていた黒い点々。 小さくため息をついて、身体を起こす。彼女の手に握られている大きな二つの桶。 それをひとつ取って、ぴのすけの背後に遠い視線をやる。 「申し訳ありませんね…」 「いんです。居候…

東方幻想明日紀 二十三話 疑心暗鬼は八方を囲む墻壁

ぴのすけの顔に、もやがかかっていた。 ずっとだ。あれから、ずっと。あの雪はなんなのだろうか。自分なりに考えた。 考えに考え抜いた。 これは雪じゃあない。 どんなに考えても、それしかわからない。 食後、ぴのすけと一緒に彼の部屋を尋ねる事にした。 …

東方幻想明日紀 二十二話 解けないふたつの雪の塊

さほど登っていないはずだった。 道は険しくなかったはずだった。しかし、地面の色は一面に照り返しを強めていた。 川の上流は、神秘的な雪の世界だった。 この小さな山の頂は、こんな様相になっているとはつゆ知らず。「こんなことになってるんだ…」 ふと、…

東方幻想明日紀 二十一話 友達という名の枷

浅く斑に積もる雪の上に、二人。 殺気を滾らせる少女と、瞳の光を表情ごと消してたたずむ少女。事の顛末はすぐに想像できた。 …身体が動かない。 二人の間に、割って入らねばならないのに。 強張ったように動かない。「どうして、こんなことをしたの」 俯い…