2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

東方幻想明日紀 十五話 もう取り返しのつかない齟齬

広めの和室、後ろではひとりの少女が、寝ていた。 僕の傍には、強張った面持ちの紫詠さんと、 ほとんど表情を穏やかにしている昨狐さん。かつて生きていた少女が、使っていた部屋だった。「…沢山の、嘘をついていました。」温かい明かりの下。 真っ暗な表情…

東方幻想明日紀 十四話 たとえ殺人鬼でも構わない

地面に散らばった光苔が放つ淡い光が、辺りを包んでいた。ふりしきる凍てつく雨の中、上がる荒い息。 上下する右肩には、鋭い痛みと血潮の鼓動。裏腹に身体の芯は燃えるように熱かった。守りぬけた。 命を散らしかけた大切な、仲間を。 それだけで、もう全て…

東方幻想明日紀 十三話 こんにちは家族、さようなら恩情

崖の岩に寄りかかって、ぼんやりと身体を投げ出したまま どれくらいの時間が既にたっていたのだろう。乾いた涙跡が、僕の頬を冷たく固めていた。 冷え込んだ空気は既に僕の喉を凍りつかせて、 掠れたあの音すら出す事を許さなかった。僕の周りの雪は、陽光が…

東方幻想明日紀 十二話 断ち溶けた僕の柔らかい雪

洞窟の中は、いつもよりも寒かった。 気分の問題もあるけど、物理的にも。珍しく朝からぴのすけの姿がなかった。 まだ朝といっても、太陽が昇る前。こんな時間には寝てるはずなんだけどな… 夜型に近い生活をしているから未だに食料を取りに行っているのかも…

東方幻想明日紀 十一話 綺麗で脆い内緒事

「…最近随分沢山持ってくるようになったねー。」お昼すぎの薄明るい洞窟で。 僕が袋を下ろすのを見て、驚くように首をかしげる少女の姿がそこにあった。袋の中に詰まった野菜やら肉やらを見つめる無垢な瞳に、疑念はこもっていない。 ただただ純粋に、僕に感…