東方幻想今日紀 百三十二話  水田の蛙

妖怪の山を降りた。


煌々とした月明かりが照らす田園風景を、一人でぶらぶらと歩いていた。
目的地は命蓮寺だが、寄り道はしていた。


丙さんは、無縁塚に行った。
道は、天狗の大目玉を食らっている。
メルシアさんは、道を待っている。
深水は、反応がない。



・・・久々の、一人。



こんな広い外の世界で、一人きり。




田んぼを覗き込むと、蛙が喉を膨らませていた。
捕まえようと手を伸ばすと、水音を立ててさっと逃げ出してしまった。

ため息が、口から漏れた。




・・・そりゃ、どんな気持ちで手を伸ばしたかなんか、分からないよね。

からしたら、殺されるとでも思ったのだろう。

これだから、誤解なんてものが起こるんだろうね。




悪意なんてなくても、どっちかが臆病なら衝突は起こる。
臆病が転じて、勇気になると、悲劇が起こる。



蛙が毒を持っていたら、蛙が勇気をもっていたら・・・






気が付いたら、またため息が出ていた。




・・・こんな事を考えるのはやめよう。もう終わったことだ。







さて、かえるか。





つづけ