2012-01-01から1年間の記事一覧

東方幻想今日紀 百二十三話  せきわんのがいらいじん

薄れた視界から、ぼんやりと何かが見える。 ぼうっとした赤い光に照らされた、木の影。 「・・・。」 身体がびりびりする。 顔がひりひりする。 何だか、けだるい。 「・・・はっ!?」 がばっと起き上がると、目の前にあの少女がいた。 しゃがみこんで、俺…

東方幻想今日紀 百二十二話  いぬばしり もみじ揉め揉め

「・・・はあ・・・。」 妖怪の山を登りながら、暗い顔で溜息をつく。 足どりも、歩行のそれになっていた。 今、一人だ。辺りの夕暮れは徐々に深くなっていく。 こんな状況なのも、それなりに訳がある。 調子に乗って走りまくってたら、 案の定というか、ム…

東方幻想今日紀 百二十一話  時すでにお寿司!

「・・・はい、これを飲めば大丈夫だよ。」「・・・。」 俺は命蓮寺に戻った後、野孤にもらってきた薬を渡した。 小さな狐の女の子は顔を輝かせて受け取り、それを飲んだ。 「早くよくなるんだぞ・・・?」 俺はピンクのふわふわの髪をそっと撫でた。 ・・・…

東方幻想今日紀 百二十話  事変の真相は誰だ

「・・・これはまいったな・・・。」 朝一番の、ため息のようなひとこと。 今俺は、寝巻きのまま、正座にして虫かごを持ち上げている。 もし今鏡を目の前に置かれたら、 映った目の前の顔は曇ってるという印象を受けるだろう。 「なんで全滅してるんだよ・・…

東方幻想今日紀 百十九話  やった毒蛾だ!わっしょいわっしょい

「はあ・・・丙さん、軽いな・・・。 ちゃんと物を食べてるのかな・・・?」 丙さんを布団に運び込んで、軽く一息。 丙さんを負ったのは初めてだったのだが、軽い。 同じ年齢くらいの小春よりも軽かった。 これも、毒の作用なのだろうか。 ・・・でも、彼女…

東方幻想今日紀 百十八話  敵と毒はいつも身近なところに

額に刺さる床は固くて、氷のように冷たかった。自分の顔が熱いから、そう感じたのかもしれない。 強い痛みが唇からして、鉄の味がした。知らず知らず、強く唇を噛んでいたのだろう。 身体はほとんど人間のままなのだから、仕方ない。 季節とはそぐわない、八…

東方幻想今日紀 百十七話  すれ違いの始まり

「慧音先生にお願いがあるんですっ!」 「・・・あー、開口一番にどうしたんだ?」 寺子屋に着いて、慧音先生に会うや否や、 頭を下げてお願いした。慧音先生は戸惑いながらの苦笑いだった。 「慧音先生、道について詳しく教えてください。」「以前に教えた…

更新式 幻想今日紀劇中キャラクター紹介 (完全版)

随時更新します。お楽しみ(?)に。 更新履歴 十月 九日 名前リストにエルシャを追加。 九月 二十四日 メルシア、日車 堂の説明を追加。小春の能力訂正。 八月 五日 丙の年齢を修正。 二十八日 キャラクターの枠を一つ追加。 メルシアの基礎設定固定。 七月…

東方幻想今日紀 百十六話  彼我事は僻事にあらず

野孤を寝かしつけた後、 俺は彼我さんから彼女の考察を聞いた。・・・積もる話になるかもしれないので、 部屋を一応空けて、外で話すことにした。 外に出るともう真っ暗で、水を撒いたような光が 煌々と空に散らされていた。この時期にしては珍しく、空気は…

東方幻想今日紀 百十五話  ドクガトキシン

「・・・どうルーミア、見つかった?」「だめだー・・・見つからないよ・・・。」 がっくりとうなだれる金髪ショートボブの女の子。 別にそんなに熱心に探さなくてもいいのにな・・・。 特にそっちに利点は無いわけだし・・・。 「このままじゃ・・・ご飯に…

東方幻想今日紀 百十四話  盲目ナイトバード、その名はルーミア

暗い道を歩く一人の少年の影。 着慣れた様子の和服の襟も直さず、手には小さな手提げ鞄。 どこか物憂き顔で、後ろ布をわずかにはためかせていた。 「・・・今から帰ると、大体九時くらいになるのかな。」 歩を進めながら、誰ともなしに独り言をつぶやく。 も…

東方幻想今日紀 百十三話  祭りの終わりは肌寒くて

命蓮寺にたどり着き錠を開けると、案の定誰もいなかった。 閑散としていて、寒々としていて。それでいて広くて。 そびえ立つ鐘は、重々しくぶら下がっていた。 どこか、いつもの命蓮寺じゃない気もする。 あの後、俺は屋台の方で皆に経緯を一通り話した後、 …

東方幻想今日紀 百十二話  アマル蛾ムの恐怖にさらされて

「・・・ちょっといいですかっ・・・!」 「秋兄、そんな掻き分けんなよ!すみません、すみませんっ!」 俺が人ごみを掻き分けているよそで、小春は頭を下げながら必死で謝っていた。 無理もない。自分自身、そんな迷惑な事はよっぽどのことが無い限りしない…

東方幻想今日紀 百十一話  リユニオンカウンター?

「おはよー・・・あれ?」寝起きで眠い目をこすりながら、広間に下りると、 怪訝そうな顔で新聞に目を通すネズミの女の子の姿があった。あれ・・・命蓮寺って新聞取ってたっけ? 「・・・号外だと書いてあったから買ってきたはいいのだが・・・」彼女は俺に…

こぼれ話

こんばんは、あおみどです。 ちょっとしたお知らせ込みの雑記です。 今東方幻想今日紀は百十話までありますよね。実は十数話、タイトルを付けていないのがありますが、近々付けます。 また、キャラクター説明の方も早く補完します。 二章までのまんまですの…

東方幻想今日紀 百十話  深い禍根をのこしたまま

「・・・ごめんね・・・連れてきておいて、いきなりこんな事言って・・・。」丙さんは、そのままの格好で、そのままの表情で言った。 彼女が仰ぎ見ているのは星ではなく、そのもっと向こうに思えた。「・・・大丈夫ですよ。」 俺は、それしか言えなかった。 …

東方幻想今日紀 百九話  お祭りの夜に生きていて

祭囃子と雑踏を背景に、二人の青年がたたずむ。 身長差は僅かだが、呈している年齢には少し差がある。 俺はシャクナゲさんから思いがけない事を言われた。 深水が、俺にとって必要がない。 いくらシャクナゲさんの言葉でも、 咄嗟にそれを信じることは出来な…

東方幻想今日紀 百八話  相の無知

「くそっ・・・!腕で深水を弾くなよっ・・・!!」「落ち着きなよ・・・そんな軽いものを全力でぶつけられても 人間だって怪我すらしないからね・・・?」 少年に向けられた渾身の一振りは、あえなく腕で払われてしまった。 鞘付きで、おまけに凄く軽い刀で…

東方幻想今日紀 百七話  林に潜む一つ目のアウトサイダー

俺とナズーリンは、組んでいた互いの腕を解いた。 決して付いている量は多くない血の付いた赤い着物。ぐしゃぐしゃに壊された、参加者の唯一の明かりである提灯。 ・・・さっき地面に落ちていたこの二つから導き出されるもの。 それは、この近くに何かがいる…

東方幻想今日紀 百六話  最期の判子

二個目のチェックポイントを抜けると、道幅が少し広くなっていた。 夜は更に深くなって、木々は少しだけ数が減った。少しずつ、出口に近付いてきているのだろう。 ・・・そういえば。 始まってから一度も、他のお客さんに会っていない。 それはそれで好都合…

東方幻想今日紀 百五話  ゆがんだ提灯は温かく照らし

虫の声に遠くからのカエルの声が加わって。 夜の林道も、いよいよ静けさと寂しさをかもし出していた。二人で歩く道は、息苦しさなんてとうに超えて、恐怖の一つだった。 無言の圧力。彼女がどんなつもりなのかは分からないけど、 少なくとも今の俺には途轍も…

東方幻想今日紀 百四話  最低だ。クズだ。バカだ。愚か者だ。

「なんか・・・この提灯、でかいね・・・。」 「当たり前だろう?これ一つで進むのだから・・・。」 本殿に行くとどういう訳か、係員さんから簡単な説明があって、 その後でかい提灯を渡された後、妖怪の山に飛ばされました。 妖怪の山の中腹から帰って来い…

軽く予告。(微ネタバレ?)

こんぺいとう(「こんばんは」っぽいから)。あおみどです。 幻想今日紀三章、今回の百一話〜と序話が全くつながらない人へ ・・・いや、多分今からだとつながらないと思います。 つながった人はそれこそ、宇宙人か彼我さんです。 「みかんがひとつ、りんご…

東方幻想今日紀 百三話  お祭り雑踏、花交々

「すごい屋台の数だねー・・・人の数も・・・。」 「・・・ああ、本当にすごいな・・・。」「二人とも、はぐれないでくださいよ?」 「・・・子ども扱いか、ご主人。」「いえいえ、私もはぐれそうですから。そのぐらいすごい人の数ですよね・・・。」 七月の…

東方幻想今日紀 百二話  お祭り前々夜

俺がここに来て早八ヶ月。 梅雨が明けて、すでに蝉が至る所でけたたましく あのジリジリ声でわめいている。 幻想郷にも、そんな暑い夏がやって来た。 あの刻印異変からも、もう半年が経っていた。 残された問題は妖怪化のみ。 それさえ解決すれば、もういつ…

東方幻想今日紀 百一話 異変を終えて、さあ謎解き

「わあっ・・・本当にリア君をそっくりそのまま 女の子にしたみたいだねっ・・・! この目元なんかもう完全にそっくりで・・・!」 今目の前で黒髪で猫耳の少女の頬を 目を輝かせながらつついたり触ったりしている 背丈の小さな赤帽の女の子、丙さん。 俺は…

東方幻想今日紀 三章  序話  今と過去の縁を結ぶ

「・・・おや、目を覚ましましたか? かれこれ、一ヶ月も寝ていたのですね。」 きょとんとした紅い瞳の前に 少々大人びた、微笑む包帯の少女が映りこんだ。 丸一ヶ月、寝ていた。 ・・・その事実を、少女は難なく飲み込んだ。 もちろん原因は、彼女が長い、…

東方幻想今日紀 三章  序話  僕のしあわせは

「メルシアくん・・・だよね・・・?」 「ああ、もちろんだ!」 メルシアくんは自信満々に、胸を叩いて頼もしそうに言う。 ・・・でも、私の視線は閉じたままの 月の淡い光に照る彼の左目にずっと注がれていた。 ・・・理由なんて、私には訊けなかった。 ぼ…

東方幻想今日紀 三章  序話  籠の中の龍

「おい、いい加減に寝たらどうだ。」 「・・・こんな状況じゃ寝れないよ・・・。」 ・・・私がここに運ばれてから三日。そう聞かされていた。 つまり私がここで目が覚めて、二日目になる。 私を敵視している国の人の発言だから、 間違っているかもしれないけ…

東方幻想今日紀 三章  序話  僕にとって初めての 

僕が丙子さんに怪我の手当てをしてもらって二日目。 小さなもやもやが一つだけ、僕の心の中にあった。 それは、怪我のことだ。 僕は両足と腰を骨折した。 僕の国では敵視されている、 龍の丙子さんの家で寝泊りしているのはそういった理由だ。治ったら、僕は…