東方幻想今日紀 五十一話  門前の懐古

「・・しかし、随分と男らしくないんですね・・
 刀で戦うつもりでしょう・・?」

少しあざけるようにその門番さんは言う。

そんなの、決まっている。


「俺は、これで行きます。」
「!?」

俺は刀をそっと地面に置いた。
そして、両の手を軽く目の前に出し、構えた。
彼女は目を丸くしていた。

「・・あなた、人間ですよね?」
「・・ええ、そうですが・・?」

妖怪になりかけてはいるが、まだ人間だ。

「・・まさか・・・素手で戦うつもりですか?」
「ええ、そのつもりです。」

俺がそう言うと彼女は軽く笑った。

「・・そうですか、よほど自信があるんですね。
 強い人間と手合わせするのは久々なんです。
 ・・もっとも、私に挑んでくる人も久々なんですよ。」

「腕に自信なんてありませんよ。」
「・・嘘ですね。こんなに自信に満ちた目で私に挑む。
 それは、強者の行動です。そんな人間の強者を
 私は何度も見て来ました。達人の人達です。」

まくし立てるように門番さんは言う。
彼女の目は輝いている。
これから戦う強者への期待。

しかし、その期待には応えられそうに無い。


俺は嘘は吐いていない。
・・ただ、自信に満ちているのは本当だ。
自分は勿論格闘の経験は無い。喧嘩も強くない。

よく・・・いじめっ子に泣かされ、
いつも一人の友人がかばってくれた。そんな人だった。



・・そう、自分には考えがある。


俺はにっと笑って、
ファイティングポーズを崩さずに言った。

「・・・さあ、始めましょう。」



つづけ