東方幻想明日紀 二章 序話
「…どうして、こうなっちゃったのかなあー」
膝の上に載せた肘が、頬杖を作って少女の重い頭を支えていた。
悶々とした感情が、彼女の頭を包んでいた。
少女は迷いに取りつかれていた。
何十年も何百年も目を開かない、横たわった青い髪の少年の前で。
少年の口から漏れる静かな寝息が、彼女に焦りを促していた。
「僕は、これでよかったのかな…」
誰にともなし、かつて村があった林の中で。
独り語散る少女の声は、苔むした岩に吸い込まれた。
蝉の声だけが、深緑にこだましていた。
うずくまる少女の髪の色は、地面の薄緑とよく似ていた。