東方幻想今日紀 二十六話  刀の謎を解き明かそう

「ふーん・・・そんな事があったんだね・・。」
「・・・そうか。そんな悪夢を見ていたのか。」

夢の経緯を話すと、二人とも感慨深そうにしていた。
いい人達だなあ。たかが夢なのに・・。

「だから刀の名前が知りたかったのね・・。」
「うん。そうなんだ。どうやって刀の名前を知るの?」

「うん、大した方法じゃ無いんだけど・・・。」
「・・・もしかして・・刀と会話するんですか?」

空気が張った。

「「え・・・?」」

そしてこの反応である。
何で二人して軽く哀れむような目なんだよ。

「あー・・・そういうことじゃなくて、
 何でも道具の名前がわかる人がいるんだけど・・。」
「・・もしかして香霖の事かい?」
ナズーリンが口を出す。

「うん。その人に見てもらおうって事。
 そうすればその刀が彼我さんかわかるよ。」

そっか・・・そんな手があったのか・・。
刀と会話とかちょっと期待したのに・・。

「あれ、リア君残念そうだけど・・・?」
「あはは・・・そんな事無いよ・・。」

うん、刀と会話できるとか少しでも思った俺が馬鹿だった。

丙さんがまた話す。
「まあ、明日にでも行けばいいよ。今日は遅いからね。」

当たり前だ。今押しかけたら迷惑もいいところだ。
 
「あ、ところでもう食終わっちゃったけど・・・。」
「「あ。」」

完全に忘れていた。
すぐに月を見た。
月は完全に欠け・・・たのは10分前位だろうか。
だんだんと戻ってきている。

「・・うう、見逃してしまったじゃないか・・・。」
「あはは、ごめんね、でもまた見れるでしょ?」
「あと短くても一年は待たなければいけないじゃないか・・・。」

ナズーリンが呻いていた。
まあ、こっちも残念といえば残念だけど。

・・・でも、収穫があったからいいかな。

明日、道を教えてもらって行くとしよう。

二人に質問してみる。
「そこってどこにあるの?」

「まさか一人で行くつもりなのかい?」
「ええ、迷惑になるといけないので・・。」

「危険な妖怪が出て来たらどうするんだい?私も付いて行こうか?」
「ナズもあんまり強くないでしょ?少なくともリア君はあの刀を
 持ってるんだからよっぽどの物が出ない限り大丈夫だよ。」

ナズーリンが尚も食い下がる。
「でも、誰かが付いてかないと・・・。君は人間なんだぞ?」
「大丈夫。親切な人に対妖怪のお札をもらってきたから。
 いざとなったらそれを使うから安心だよ。」

そう、俺には雛さんからもらったお札がある。
合わせて10枚。毒札と爆札だ。
恐らく爆札は中に強力な火薬の類が仕込まれていて、
投げると大爆発でも起こすのだろうか。頼もしい。
頼もしいけど怖い。うっかり踏んだら最期だな・・。
シャクナゲさんの家で一回落として踏みそうになった。

まあ、そこまで威力強くないかもしれないし、そもそも
踏んでも爆発しないかもしれない。地雷じゃあるまいし。

でも、リスクが高いから使えない。

恐らく毒札は・・・。
毒札は・・・なんだ?
その妖怪と仲良くなって食べ物に入れるとか。

どっかのスパイか。

・・・ノリ突っ込みさびしい。

というか仲良くなった時点で倒す必要ないし・・。
じゃあ即効性の毒?致死性の毒煙が出るとか?

ちょっと想像するか。

いきなり茂みの中から怖い妖怪が!
すかさず毒札を投げて!命中!!
当たった瞬間に紫色の大量の煙が!

ぼふっ ぶしゅー

辺りは真紫になって・・・妖怪がすぐに死んだ。

・・いかん。俺も死ぬ。お互い即死する。

そもそもそんな強い致死毒なんてありえない。
いや、人が空飛ぶ世界で思う事じゃないけどさ・・・。

駄目だ。毒札はリスクが高すぎる。使えない。

「・・と、とりあえず一人でも行けるから!」
「何だか急に不安になってきたな・・。」

「じゃあ、私が付いて行くよ。こう見えても強いから。」
丙さんが笑顔で名乗りを上げた。
そんなの嫌というほどわかってますって。
筆で木を切り裂く人が弱い訳が無い。

「そうだな。丙なら安心だろう。戦力的には。」
戦力的には、が凄く強調されて発音していた。
他は安心じゃないのか。

「リア君は私が付いて行ってもいい?」
「うん。丙さんが一緒なら安全だし・・。」

「・・・悪戯すると言っても?」
「なっ・・・!!」
「あれ?ナズーリンさんどうしました?声を荒げて・・?」
「・・・なんでもないっ!」

丙さんが急に妖艶な口調に変えた。
何か凄くつかみづらい人だなあ・・。
あと何故ナズが反応してたし・・。

「じゃ、決まりだね。明日、一緒に刀の名前を訊きに行こう。
 んで、私はもう帰って寝るから。ばいばいっ。」

丙さんはそういい残して屋根から飛び降り、
笑顔で手を振って帰っていった。

「全く・・丙の奴・・・。」
「ほんと、冗談が好きだよね・・・。」
「ああ、真意がわかりづらいよ・・・・。」
ナズーリンと軽く笑い合った。

ふと空に目をやる。
月は完全に元に戻っていた。満月だ。

「さあ、もう遅い時間だから寝よう。今日はありがとう。」
「うん、こっちもありがとう。楽しかったよ。」
色々ありすぎて疲れたけど・・。

「おやすみ、また明日。」
「おやすみ。」

こうしておやすみと言える事がとても幸せに感じられる。
さっきの悪夢を見て、それを実感した。

それにしても、あの悪夢は一体・・・。
まるで現実のように生々しかった・・・。

その証拠に、彼我さんの声が頭に染み付いている。
だんだん怖くなってきたのでこれ以上考えるのはやめた。

数分後、俺は客間に戻って布団を敷いて寝た。
駒が落ちてて間違えて踏んだのはないしょ。



つづけ