東方幻想今日紀 十八話  必殺大根斬り

雹を切り抜け、ハプニング(?)もあったが
無事俺は小傘さんと村市場に来ていた。

「すごい人だな・・・」
俺は率直に感想を言った。
かなりの賑わい様だった。下手をするとはぐれてしまう。

「うん・・・そうだね・・。」
小傘が少し不安そうに言う。

「えっと・・八百屋だよね?どこ?」
「あ、うん、そこだよ。」

小傘が指差したところは綺麗な出店。
割と大きなスペースで野菜が売られていた。
四十半ばくらいのおじさんの店員さんが座っていた。
さほど遠くは・・・ないが。

・・・が人の量は結構ある。
目測で15mほどだが結構遠く思える。

「・・・毎回こんなに人がいるの?」
だとしたらすごい市場だ。

「・・ううん。こんなに多くは無いよ・・。
 ・・・だから気になるんだけど・・・。」
小傘は首を振りながら言った。

「まあ、にぎわってるのはいいこ・・」

「お前調子に乗るんじゃねえええええ!!!」
野太い大きな声が辺りに響いた。

「「!?」」

何だ何だ。というか俺話さえぎられすぎ。どういうことだ。
声がしたほうを見る。
するとさっきの八百屋の前で人が円状に集まっていた。
何だ。何が起こっているんだ。

人だかりの先にいたのは
二人の図体のでかい男と、か弱そうな少女。
男の片方はモヒカンで、もう片方は刺青があった。
小競り合いか・・?

状況を確認していると小傘が慌てた様に言った。
「大変・・・止めないと・・・!!」

は・・?
とりあえず小傘の袖をつかんで引っ張った。
「は・・・放して・・・。」
「ごめん、無理。」

正義感が強いって言うレベルじゃない。
すごい心意気だ。正直びっくりした。
・・・だけど。

「今小傘が出て行って何になるのさ?
 大の男二人に敵うわけが無いでしょ?
 小傘がやられたら・・・
 俺があの二人を両断することになるし・・・。」

冗談のつもりだが笑えない。というかリアルだ。
リアだけにな!
・・・笑えない。

「でも・・女の子が・・・。」
「だけど、今はただ見守るしかない。」
「そんな・・・。」

小傘は泣きそうだった。
見上げた姿勢だけどここで出るのは賢明じゃない。
かといって何も出来ない・・・くそっ・・・。
剣で・・・威嚇できないか?
そう考えた時だ。

「おいおい。
 俺の店前でこんな可愛い嬢ちゃんいじめないでくれや。」

そんな声がしたかと思うと、
八百屋のおじさんが人ごみを掻き分けて男の前に立った。
・・何してるのおじさぁん!?

「ああ?てめえ何口出してるんだよ?死ぬか?」
モヒカンの方がおじさんに絡んできた。

「はは、あんたにはこれだ!」

そう言うが否や、どこから取り出したのか、
大根でその男の脇腹と頭を目にも留まらぬ速さで殴った。
刹那、鈍い音がして、モヒカンが倒れた。
・・・ついでに大根も綺麗に割れていた。

・・・は?何してんのこの人。
無駄にかっこいいんですが・・・。

「お、おいてめえ!殺したのか!?」
刺青が叫ぶ。

「安心しろ。気絶させただけだ。お前も家の大根食ってくか?」

「くっ・・・ちくしょおおおぉおお!!!」

刺青は逃げていった。
女の子がぽかーんとしていた。

俺と小傘は唖然としていた。なんだこれ・・・。

周りの野次馬からは歓声と拍手が上がった。


つづけ