東方幻想今日紀 十六話  花咲くオッドアイの少女

「じゃあ、行こっか!準備は良い?」
小傘が明らかに嬉しそうな声で言う。

小傘と一緒に買い物に行くことになりました。
ここで、ひとつ気になった事が。

「・・・ところで、どこで何を買うの?」

「えっとね、今日の晩ごはんの材料を人里の市場で
 買おうと思うんだけど・・・いいかな?」

もちろん、異論は無い。無いけど・・・。
「うん、それはいいんだけどさ・・・・
 ねえ、呉服屋ってあるかな?
 服がこれしか無くて・・駄目かな・・・。」

我ながら凄く図々しいと思う。
居候しといて服が欲しいだのはわがままだと思う。
表立ったことをしてない訳だし・・。

小傘ははっとした顔で早口で言った。
「あ、そうだよね・・・。ちょっと待って!
 今からなっちゃんに訊いてくるね!」

なっちゃん・・・?
・・・誰・・?

・・あ、ナズーリンさんか。
やべえ、めっちゃ面白い。
あんな可愛いあだ名で呼ばれてたんだな・・。
ちょっと待て、笑いがこらえきれない。

一人身悶えているところに小傘が戻ってきた。

「ねえ!服買っても良いって!・・・どうしたの?」

「何でも・・・ないです・・・。」
やばい。ツボった。
もう今度からなっちゃんって呼ぼうかな。
心の中だけにしとかないとあれだけど。


「じゃあ、行こうか!あ、空は飛べる?」

飛べてたまるかこのやろう。

「・・できるわけないじゃん・・?」
「えっ・・?」

心底意外そうな顔をされた。
あなたは一体人間を何だと思っているんだ。

「・・じゃあ、歩いていこうか!」

優しい。俺に合わせてくれるなんて。
勝手に飛んでいかれても困るけど。
・・・ん?・・飛ぶ?

「あのー、歩くとどのくらいかかるの?」

小傘は少し思案顔をしてこう言った。
「んー・・片道二時間くらいかな・・。」

思ったより遠くないけど遠い。どっちだよ。

・・・ノリ突っ込みさびしい。

というか帰ってくる頃には最低二時か・・。
ふと小傘を見ると同じことを考えていたらしく、

「ねえ、私がリア君を背負って飛ぶのってどうかな・?」
などとのたまった。

「ええ!?あ、いや、いい、遠慮しておきます!」
何て天然なんだ・・。
少しはガードを固めてください。

「じゃあ、やっぱり歩きだね。」
ほんわかした笑顔で小傘が言う。
く・・・かわいすぎる・・。

歩き始めることしばし。


・・・あ、服のお礼。

「服のこと、ありがとね本当に・・・。
 何か・・図々しくてごめん・・・。」

「お礼はなっちゃんに言ってね。
 訊いたらすぐに良いって言ってくれたんだよ?」

うわ。何それ超感激。優しさ天井知らず。
なっちゃん無双。ごめん言い過ぎた。

・・ノリ突っ込みさびしい。

「・・そういえば何を買うの?・・食材・・。」

小傘さんは懐から紙を取り出した。メモかな。

「えっと・・・。玉葱と人参と馬鈴薯と鶏肉とお米と・・。」

ふむふむ。・・ってこの食材はカレー!?
マジか。幻想郷にはカレーが!?
よっしゃ大好きカレー。失敗しなかった唯一の料理!

「あとは・・にんにくとしょうがと唐辛子と薄荷(ハッカ)と
 芥子とウコンとクミンと小豆蒄(ショウズク)と・・・。」

待て待て待て。ルーから作る気か。
どんだけ本格的だよ。これなら俺でも失敗できるな。

ここの人の料理のレベルが普通じゃないことは良くわかった。


少し曇ってきた。
小一時間歩いたのでもうしばらくで着くだろう。
ここの人はやっぱりおもしろいなあ。


つづけ