東方幻想今日紀 九話  命蓮寺で自己紹介!

全員が卓袱台を囲んで座ったところで
ナズーリンさんがこう切り出した。

「さて・・・相談したい事というのは・・。
 もう話したとは思うが・・・改めて言おう。」

どうでもいいけど、何で俺だけ座布団がないんだろう。
あ、人数分か。

「彼をここに住まわせてやれないだろうか。」

「私は賛成ですよ。その人、面白そうです。」
頭巾の人がくすくす笑いながら言った。

「うん、私も賛成かな。でも一つ質問して良い?」
船長帽の人が言った。

え?何だろう。出身とか・・・?

「その刀は・・・どうなの?」

・・あ。しばらく触れられてないから忘れてた。
「・・・どう・・・とは・?」
「ああ、ごめん。その刀って結構危ない?
 そういうことをする人じゃ無さそうだけど
 念のために・・ね。」

あ、危なくなんかないさ。
適当に振り下ろしてもさくっと岩が切れる位安全だよ。
落としたら地面に深々と刺さる程度には切れ味は良いさ。

・・比喩じゃないしなあ・・・これ。冗談でもなんでもない。
冷や汗が出てくる。いや、でも本当のことを言わないと・・。

「えっと・・・黙り込まれると・・・。」
「あ、ごめんなさい言いますね・・・実は・・。」

逃げるな・・・・本当の事を言うんだ・・・。

「えと・・・この刀、少しばかり良い刀なんですよ・・。」

一同、少し表情が曇る。
「・・・というと・・?」

「木が一振りで斬れます。」
「「「はあ!!?」」」「「え?」」

すげえ驚かれた。そりゃそうだけど。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!
 そんな刀が存在する訳無いだろう!?」
ナズーリンさんがびっくりした様子で訊く。

まあしょうがない。俺だって未だに信じられない。

「・・すいません、何か斬ってもいいものありませんか?」

グラマラスなグラデーションのお姉さんが
少し思案顔をしてこう言った。
「んー・・・庭に廃瓦があるんですが・・・。
 それを重ねて斬ってみてくれませんか?」

「あ、いいですよ。もちろんです。」
とりあえず切れ味の実証は出来る。

グラデーションのお姉さんが手をぱんと叩いて言った。
「では、皆さんでちょっと庭に行きましょう。」

いい笑顔だなあ。凄い癒される。

・・・にしても・・何でこんなことになったし。


数刻後

「・・・・はあ。」
絶句した。瓦が二十枚位積み上げられていた。
木が切れるといっただけなのに石の瓦を何十枚も
重ねるなんてここの人はどうかしてるんじゃないだろうか。
上段の構えを取った。というかそうしないと無理だ。

漆黒に近い青い刀を抜き、見据えた。
まだ日は高い。午後三時くらいだろうか。

皆が見守る中、呼吸を整えた。
気分は剣道の師範。なった事無いから良くわからないけど。

すばやく垂直に一太刀!

スッ

振り下ろした・・・が手応えが無かった。
もちろん石瓦をしっかりと切り裂いていた。
石瓦は動かなかったが綺麗に切れていた。

あれ、ちょっと前は岩なら手応えがあった気が・・。

ふと、周りを見回す。
みんな唖然としていた。

「えっと・・・はい。良く切れるんです・・。」

「・・・恐ろしい刀だな・・・。」
「どういうことなの・・・。」
「背中に薄ら寒いものが・・・。」
「・・・・欲しい・・です。」
「本当だったんですね・・・。」

少しするとみんな口々に感想を言った。やらんぞ。

「では・・・その刀の話は置いといて・・。
 広間に戻りましょう。脱線しちゃいましたね。」

虎柄の衣装に黒のラインが入った金髪の人が言った。

脱線どころじゃなかった。
本題どこへ行ったという感じだ。

・・でも優しい人たちだ。
ここまでのリスクに目をつぶってくれるなんて。


数刻後


「・・みんな賛成みたいだな。命蓮寺へようこそ。
 歓迎するよ。リア、改めて自己紹介をしてくれ。」

「あ、はい。よろしくお願いします。リアといいます。
 物騒な刀を持っていますが心はまっすぐです。」

「ぷっ。自分で言うんだ。」
黒髪で黒ニーソの人が吹き出した。

「面白い自己紹介だな。リア、
 何かもっと面白いことを言ってくれないかい?
 こう・・・みんなの腹が痛くなるくらいの。」

お前がやれ。

・・酷い無茶振りがあったもんだ。
ネズミひでえ。

「えー・・・実はこう見えて女です!!」

「「「・・・・。」」」

泣いても良いかも知れない。
渾身のネタが・・・。
みんなの冷たい視線。痛えよ。痛すぎるよ。
ここに来てこんなのばっかな気がする。


無事宿泊が決まりました。嬉しいです。
あとはこの空気を何とかできれば万事解決です。


つづけ