東方幻想今日紀 七話 来る命蓮寺、来る足への侵略者

青い空の下、俺はネズミの子に詰問されていた。

「・・・じゃあ君が用件を思い出すまでこちらも
 いくつか質問していいかい?」

「はい、どうぞ・・・。」

何だか逮捕されて尋問されてるみたいだ・・。

ネズミの子は一呼吸置いて話し出した。
「君はどこから来たんだい?随分と
 見慣れない服装をしているが・・。」

また今までのいきさつを話すのか・・・。
長いから話したくないんだよなあ・・・・。

「ひ・・・。」
「ひ・・・?」

「ひ・み・つ」
「帰っていただけないだろうか。」

「ごめんなさい嘘です話します!!
 帰るところが無いので困ります!!」

「ふ、用件はそれだろう?
 泊まるところが無い、といったところか。」

あ。それだ。
「えっと、用件を思い出しました。それです。」

「鎌をかけて正解だったよ。多分それだろうと 
 思ってたんだよ。話す手間が省けた。」

うわ。やたら頭が切れるなこの人。

「ってことは、どこから来たかは
 どうでも良かったんですか?」
ちょっと助かったかも。

「確かに気になるが、用件を君が思い出すのを待つより
 手早く聞き出すほうが効率がいいだろう?」

えー・・・そういうことなら・・。
「すみません。異郷の地に来てすむところが無いので
 しばらく泊めてもらえませんか?」

俺がそう言うと彼女は微笑んで言った。
「ああ、一応客間が空いている。恐らく大丈夫だ。
 ・・・ただし、雑務や仕事を手伝うことになると思うが・・。
 それでもいいかい?」

え!?いいの!?
というか仮にも会ったばっかだぞ。

「い、いいんですか・・!?」

俺がそう言うと彼女は楽しそうに笑った。
「ぷっ、何て顔してるんだ君は。
 まさか駄目元で言ったのかい?」

「全く・・図星か。でもそういう所、少し気に入ったよ。
 後について来てくれないか?案内するよ。」

「あ、ありがとうございます・・・・。」
なんていい人なんだ。俺にとって泊めてくれる人は
いい人だ。何だその基準。

・・・ノリ突っ込みさびしい。

とりあえずにこにこしながら着いていく。
「う・・・何だその満面の笑みは・・・。」
あ、ダメ?
顔を戻してついて行く。

ここが命蓮寺か・・・。
清潔感のある境内だ。手入れがされている植え込みも綺麗で、
奥には大きな鐘が見える。除夜の鐘もこれだろうか。

少し歩くと、ネズミの子が立ち止まって話しかけて来た。
「そういえば自己紹介がまだだったな。私の名はナズーリン
 妖怪ネズミだ。ここの住人・・・といったとこかな。君は?」
妖怪ネズミ・・。やっぱ妖怪だったのか。
「ああ、えっと、俺はリアっていいます。人間です。
 何か気がついたらこの辺に居ました。」
「あはは、何だその言い方。面白いな君。
 もしかしたら長い付き合いになるかもしれない、よろしく。」

「え・・・・?」
いきなり何言ってるのこのネズミさん!!?

「え、いや別にそういう意味じゃなくて・・・。
 ええい、顔を赤らめるな!!馬鹿か君はっ!!」

あ、そうなのか。びっくりしたー・・。
どうでもいいけど馬鹿って言われた。ちくしょう。

門の前まで行くと立ち止まった。
「・・ここが玄関だ。私の後に続いて入ってくれ。」
玄関は普通だ。木の引き戸だな・・。
「おじゃましまーす・・・。」

中に入ると黒髪ショートで黒ニーハイソックスの
変わった黒一色の格好の女の子がいた。

「お?見慣れない顔が居るねえ?
 だれ?うわまさかあんた・・・・彼氏?」
「馬鹿を言うな。今日からしばらく
 泊めることにしようと思うんだが・・・駄目かな?」

良く見ると背中に妙な羽が生えている。
いや羽なのか?棘みたいな形容しがたい青と赤のやつ。

「・・・友達なの?」
黒髪の子の表情が少し曇る。
「いや、さっき会った他人だ。」
「え・・・・。」
やばい。何だか雲行きが怪しい。
「・・・その子の住むところが無いから泊める、とか?」
「ああ、そういうことになるな。どうかな?」
・・?・・何でナズーリンさんは俺を擁護しようとするんだろう。

「・・・私は構わないけど・・他の人にも聞いたら?」
「ああ、もちろんそうするつもりだ。これからみんなを集める。
 で、最終的には聖の許可を求めるつもりだ。それでいいかい?」

「ん、わかった。みんなを呼んでくる。ちょっと待っててそこの君。」
「私も行ってくる。そこの広間で正座で待っててくれ。」
「あ、ありがとうございます・・・・。」

入ってみると広間は畳の間でかなり広い。テニスコート一面はある。
隅に大きな卓袱台が立てられている。あれで食事をするのだろう。
・・・正座・・・?
座布団・・・が見当たらない。

15分(くらい)経過。
あ・・・・足が・・・・。
もう足の感覚ねえよ。
あぐら・・・かいてもいいよね・・?
あ、でも誰か戻ってきたら・・・。
とりあえず足を・・組み・・・?
あれ、足が動かない。
・・・動かねえよ!!俺の両足が!
あれだ、動かないと思うからいけないんだ。
要は気持ちの問題だ。いけると思えばいける。
よっと・・・・・あれ。

足に迫る侵略者(痺れ)と戦いながら顔の知らない
皆さんの到着を待つ俺。
泊まれることになったのはいい。ありがたいです。
いい人たちで安心しました。ここでやっていけそうです。
もっと贅沢を言うなら出来れば座布団が欲しかったです。
綿が入ってない布同然の座布団とかでもいいし。


つづけ