東方幻想今日紀 六話  ねずみの女の子の皮を被った偉そうな奴

「おはようございます。起きて下さい。」
「んっ・・・・・。」
シャクナゲさんに揺り起こされてる。
でもまだ寝て居たい・・。眠い。

「ごめんなさい、もう少しだけ寝かせ・・」
「とって食いますよ?」

ガバッ

後方に飛びのいてさらにバックステップ空中宙返り!
サイドステップからの壁逃げ防御体勢!!
その間、約1秒強。(多分。)
寝起き!?んなもん知るかあぁぁああ!!!
俺はまだ死ぬわけにはいかねえんだよおぉお!!!!

「くくくく食わないでください・・・・。」
震えが止まらない。

「じょ、冗談ですよ・・・。本気で怖いんですね・・・
 凄い俊敏で人間離れした動きをしてましたが・・・。
 そろそろ出発かな、と思いまして・・すみません・・。」

何だ冗談か・・・。
えらく心臓に悪い冗談だな、おい。

「えっと、案内しますね・・。着いて来て下さい・・。」
「は・・・はい・・・。」
シャクナゲさんと外に出た。
「じゃあ、しばらく私の後ろを歩いてください。
 そのあと、行き方の説明をします。いいですか?」
もちろん。俺はうなずいた。


歩くこと数分。
お礼を言うことにした。

「あ、本当にありがとうございました。
 すごく楽しかったし、助かりました。」

「いえいえ。こちらこそ久しぶりに人間と話が出来て
 楽しかったですよ。また困ったら来て下さい。
 例えば命蓮寺の方に断られたりしたとかですね。」
「あ、そのときはどっかでのたれ死にますので。」

あはは、と二人で笑う。
そうこうしてる内に近くまで来たみたいで、
シャクナゲさんは足を止めた。
「あ、ここから少し遠くに大きな一本杉が見えますか?
 あそこの一番近くの角を曲がると命蓮寺ですよ。」

良く目を凝らすと100Mくらい先に杉の木があった。
そこの近くに角が見える。あそこか。

「では、お元気で!!」
俺は杉の木まで猛ダッシュした。
俺は陸上部。100mは12秒ちょいでいけるぜ!
全力疾走。久しぶりにこんなに走った。
杉の木についた。しかし、何かがない気がする。
・・・・・何だ?何がない・・・?

あ、いっけね。刀。

「おおおおおおおああ!!!!!!」

100mが300mになった。
シャクナゲさんが苦笑いだった。
めちゃくちゃ恥ずかしいなもう。

それから数刻。
俺は命蓮寺の門の前にいた。

誰かが門の前を掃除していた。

・・・ねずみ?
明らかに人間にネズミの特徴を加えた感じの少女が
門の前で掃除していた。
背丈は低めでネズミの耳、尻尾があった。
グレーの服装、穴あきスカート。
首からかかってる青い布はきっとケープだろう。
年齢から言うと、13か14くらいだろうか。

近づいて声を掛けてみることにした。
「すいませーん、ちょっといいですか?」
「ん?参拝客か・・・私に何か用かい?」

面食らった。想像と全然違った。
もっとこう・・・何だか高い声を想像してた。
あと何か小さい子が使う不完全な敬語みたいな
ものを予想してただけにびっくりした。
何だか知的な口調で女の子にしては声が低い。

「・・・何だ。その目は。話しかけておいて
 いきなり黙ることはないだろう・・?」
「あ、すいません、えっと・・・。」
やべえ。声と口調のインパクトで用件忘れたよ。

「まさか、忘れたとでも言うのかい?」
というか何でこんなに偉そうなんだよ。
上から目線すぎるだろ。忘れたけど。
「はい、忘れました・・・。」
「・・・はあ。いったいどういう頭をしているんだ・・。」
酷い言われようだ。
あと何だか哀れむような目で見られた。
明らかに年下なのに。

シャクナゲさん、心が折れそうです。



つづけ