東方幻想今日紀 二話  面白い河童と謎の切れ味の凶器

あの厄神と別れて震えた足で歩くことしばらく。
深呼吸して周りと自分を良く見てみる。

まず周囲。
前いたところとは違い、快晴だ。雲ひとつない。
そして、大きな川が近くを流れている。
川は淀みなく、清流だ。見たことないくらい綺麗だ。
魚が泳いでいる。
最悪、この魚で今日は乗り切ることになるだろう。

人の姿は見えないがとりあえず人里が遠くに見えるので
そこに行けば間違いないだろう。

そして、自分を良く見てみた。
見慣れない服を着ている。
変わった素材の水色のジャケットを着ていた。
下はジーパンだったのになぜか
アクリルっぽい素材のズボンになっていた。
そして、刀。・・・・刀?
腰には刀が差さっていた。

一応・・・・抜いてみる。
抜いてみると刃渡り70cm位の直刀だった。
刀身の色は黒・・・と思っていたのだが
刀の影を見てみると綺麗な青だった。
よっぽど深い青なのだろう。
そしてガラスのような質感があった。
不思議に思って触ってみる。
金属のような感触だった。何だこれ。
とりあえず切れ味を確かめてみたかった。

そこら辺にある木を切れば何センチ切り込めるかで
大体切れ味がわかる。元いた場所の斧くらいの切れ味があるといいなあ、
とか思いつつそこら辺の木に思い切り一振り!!

スカッ

・・・え?
・・・はずした?こんな近くにとらえていたのに?
とか考えるや否や、木がこちらへ倒れてきた。
すばやく身をかわして横へ避けた。 あぶねっ・・・!!

・・・まさか一太刀で切れた・・?しかも手応えなし。
普通刀って木切るもんじゃないのに。
恐ろしい刀だ。にわかには信じられない。

岩はどうだろう・・・。
そう考えた。俺の悪い癖だ。すぐ考えが飛躍してしまう。

狙いを研ぎ澄まし、近くの岩に一太刀!

スッ

・・綺麗に切れた。
今回は手応えがあった。バターを切るような手応えが。
恐怖した。異常な切れ味。雛さん、札要りませんでした。

一応護身用と割り切っておこう。
そうでもしないと自分切りそうで怖い。
剣術とかやってないし。

そう思い、剣を収める。

収めてしばらくして、後から声がかかった。
「ねえ人間!今の見てたよ!その刀凄いね!」
でけえ声だ。少女の声っぽいけど。

声の主を探す。
・・・いない。
「人間!ここ!川!」
「え!?」
声の主は川にいた。
川の岸ではなく、中。
「・・・何してるんですか?」
「え?水浴び。」
要領の得ない答えが返ってきた。
声の主は少女。水色の髪のツインテール。めずらしい髪形だ。
作業服にリュック。何でそのまんま水浴びしてんだよ。
ん?人間って言ってたってことは・・・。

「もしかして人間じゃないんですか?」
「え?何馬鹿なこと言ってるの?ここに人間はめったに来ないよ。」

話がかみ合っていない。人間じゃないことはわかった。
「じゃあ、誰なんですか?」
「そういう時はそっちから名乗る。迷い込んだんでしょ?」
う・・。確かに。鋭いなこの子。
「えっと・・俺は・・・。」
・・・・名前が思い出せない。
・・・・嘘だろ?
「・・・どうしたの?」
「あ・・・いや、『リア』といいます。この外の世界の人間です。」

やばい・・・とっさに出てこなかったたから適当に言ってしまった。
・・・とっさも何も名前を思い出せないのは不味いことなんだけど。

「そっか、リアって言うんだ。
 私は河城にとり。河童なんだ。にとりって呼んでいいよ。
 でも珍しいね。外来人かあ・・・。良かったね見つけたのが私で。」

みんなそう言うんだな。やっぱここは危ないらしい。
って・・・河童?あのくちばしのやつ・・・?んー。

「ああ、その話は聞きましたよ。前にあった方が親切で。」
「ふうーん、そっか。・・・で、何か困ってたりする?ここに来たの初めてでしょ?」
そういえば困ってる。
「あの・・・もし迷惑じゃなければ・・。」
「ああ、ごめん、水中になるけどいい?」
「遠慮しておきます」
宿交渉失敗。
「ここからずっと東に行けば博麗神社があるからそこへ行って交渉してきたら?」
「博麗・・・神社?」
「そう。そこには紅白の気のいい巫女がいるからその人に頼めばいいよ。」
・・・紅白?って・・・え。
あの雛さんが怒らせたら死ぬって言う巫女さんのことですか。
「危険じゃないんですか?」
「多分大丈夫。お賽銭とか取ったりしなければ。」
「あ、ありがとうございます・・。
 あ、そういえばどのくらい時間がかかるんですか?そこまで・・。」
「んー・・。歩いて軽く3日くらい?
 途中に人里があるからそこでお世話になりながら目指すといいんじゃない?」

それだったらそのまま人里でお世話になるわ。
とりあえず東へ行って人里を目指すか・・。

「色々ありがとうございました。」
「大丈夫だ人間、けっぱれ!」

失笑した。この河童、変なやつだな。

こうして、人のいい河童と別れて人里を目指した。



つづけ